夏休み
フェア用のPOPを書いてしまいたいので、優先的に読んでみました。
読後感を一言で言えば「爽やか」。中村航からみなさんへ「夏の空気をプレゼント」みたいな。「このタイトルなら7月発売でも良いんじゃね?」と発売当初は思っていたのですが、読了して納得。夏の盛りが来る前、ジメジメした6月にこの作品を読んで、心の中だけでも爽やかになっておく。そして来るべき梅雨明け・夏休みを迎えるのが良いのでは?ただ「爽やかだ〜良かった〜」では悔しいので、以下感想。長くなったので省略記法にしときます。
- 作者: 中村航
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2006/06/03
- メディア: 文庫
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友人夫婦の物語を描くというフィルターがありますが、この物語はあくまでも「僕」のストーリーであり、語られる事は「僕と妻の関係性」なのでしょう。「僕」は「一家でただ一人の勤め人である妻に最大の敬意を払って」義母と共に朝食タイムを演出します。その義母との間には冒頭から微妙な距離感が描かれますが、ラストでは見えない壁のようなものを乗り越えて一段階近付くと同時に、義母は家を出る。社会人としての短い夏休みというステージで、自分と妻という限定された関係上で、「僕」は「大人の階段をのぼった」訳です。
でね。ファンタジーなんですよ。社会人で夏休み1週間貰ってもさ、大人の階段のぼるどころか、踊り場でゴロ寝ですよ。俺なんざ寝ぼけて8段くらい転落しかねない。夕陽を見ながら「土!」「おれも土!」とか言い合うバカップルとかね、死んじゃえよホント。「♪何でも無いような事が〜幸せだったと思う〜」ってロードですけど、その「なんでない日常」ってのは存在し無ぇんだよクソがッ。だからこそね、ファンタジーだからこそね、この物語が素敵だなぁと思える訳です。以上、人生で大切な部分が欠落してるクソ野郎の感想でした。