魔物を狩る少年

ようやく読了したのでレビューします。一部ネタバレ含みますので注意。
まあざっとした粗筋は公式を見てもらうとして。ヴィクトリア朝ロンドンを舞台としたゴチック・ファンタジーなわけですが、飛行船が実用化されてたり、その飛行船でもってプロイセンから国土を[殲滅戦(フェアニヒトゥング)]でボッコボコに爆撃されてたりっつー、スチームパンク的な世界観は面白いですね。つーか「フェアニヒトゥング」と「ライミー(英国野郎)」って単語が出てきただけで、無条件に50点は与えたい。
さて、その[殲滅戦]以降に跳梁跋扈を始めた魔物達を狩る「ウィッチハンター」が主人公ですが、一般的なファンタジーモノの「ハンター」とは異なって、圧倒的なパワーを持ってはいないというのも好印象。「ヘルシング」のアーカードとかアンデルセン神父みたいな「魔物よりお前らが危険杉」てバケモノじゃないんですね(まあアーカードは魔物だから仕方ないけど)。試行錯誤を繰り返して(他大な犠牲者を生んで)、とりあえず低レベルな魔物は何とか出来ますよ的な。
よくあるファンタジーモノでは、ドラクエ的に言えばLV30の勇者ご一行が主人公だったり、勇者のLVは1だけど仲間はLV99ですって感じのが多いけど、本作は主人公がLV1、成り行きで仲間になったのは戦闘能力が0に近い民間人。そんなんでバラモス城に乗り込むハメになるのだから笑えます。スライムには何とか勝てるけど、バブルスライムが出たらヤバイ感じの人たちですから。
とまあ、設定面ではかなりの好評価を与えたい所です。で、ストーリーの方ですが・・・
ベタ。ベッタベタ。安田大サーカスに言わせたいくらいベタ。文章が巧いからか、臨場感は伝わってきますし、謎を解いていくプロセスも大いに楽しめるのですが、いかんせんストーリー展開が普通すぎます。最後の方になるとオチは見えて来ますし、悪役の独白も「あーそうすか。よくある話ですね。ふーん。」て感じでアレでした。表紙のお嬢様が見た目通りのお姫様でないのが、唯一の救いでしょうか。
あと、人物の掘下げも浅いのが残念です。設定的には魅力ありそうなキャラが多く出てくるので、もっと掘り下げて描写を多くすると盛り上がりそうだけどなぁ。「ガサツ系女性萌え」の自分としては、主人公の相方にスゲェ期待してたのですが、アッサリ終わっちゃって無念。もっと萌えさせれ。
一冊に収めないでシリーズ化するとか、或は細部を省いてハリウッドで映画化(CG使いまくり)してビジュアル面に訴えたりすると、もっと楽しめると思います。そういう意味では今後の展開に期待。今後があるかどうかはわからんけどね。

魔物を狩る少年 (創元推理文庫)

魔物を狩る少年 (創元推理文庫)