一瞬の風になれ

正直一巻を読了した時点ではコレが大絶賛されてる理由がイマイチわからなかった。ゆっくりしたスタートから2巻を読んで加速がついてトップスピードへ、ほとんど減速をせずに3巻でゴールを切った。小説自体がまさに「一瞬の風に」なった。
等身大の高校生をキッチリ描いている。競技の事、家族の事、部の事、後輩の事、友人の事、ライバルの事。全てにリアリティが溢れて素直に感情移入出来る。たぶん凄い技量なんだろう学が無ぇからワカランが。一会話、一センテンス、全力だ。1000ページ、走り抜いてる。
もちろん本屋大賞の投票に値する傑作だと思うのだが、むしろ俺は「中学生に読ませたい500冊」に推したいと思う。俺はこの小説を読んで、春高陸部の連中に感動する事ができる。心からの拍手を贈れる。この後を見守りたいと思える。トリに萌えれる(←一言余計だ)。だけど、それだけだ。己と向き合う事で、仲間と心を重ね合わせる事で美しい場所に到達出来るチャンスを、俺はもう殆ど失ってる。
けど中高生の若い読者は別だ。本読んで、それに影響されて何かを始める。何かを変えて行く。それは別に恥ずかしい事じゃねぇよ、誰が何と言おうと。ベタでも、バカっぽくても。青春の形は人それぞれで、どんな生き方だってアリだ。けどコイツらの生き様を見て、誰しも少しは心動かされる事、考えさせられる事ってのがあるだろう。それは決して無駄にならねぇんじゃねえかと思う。

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-

一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-

一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-