ひと夏の経験値

ムムムムム。「TRPGプレイヤー青春小説」っていう新しい?形の小説だが、そのリアルなテイストに脱帽。キャラの作り方から立ち居振る舞い、その思考に至るまで「典型的草食動物的高校生TRPGプレイヤー」を綿密に描いてます。この辺りの「文化」を理解出来る人はそれなりに楽しめると思うけど、やはり本命は「イケてない高校生活をTRPG等に捧げてしまった漢衆」だろうなぁ。刻の涙を見るね。
文章の書き方で面白いと感じたのが、TRPGのプレイフェーズと素の会話を敢えてシームレスに書いてる部分。リプレイの感覚ですよね。小説上では登場人物の会話とTRPGキャラクターとしての会話に加えて、主人公(ゲームマスター)の脳内音声も入るけれど、上手く処理して「臨場感を出しつつ、ゴチャゴチャにならないように注意する」ってのが出来てます。ここはポイント高い感じ。
敢えてケチをつけるとすると、こんな所か。

  1. 表紙の女の子の設定がファンタジー過ぎる。ねぇよ。
  2. ショタキャラ友人をもっと生かせ。
  3. 濱元隆輔のイラストは可愛いけど、この作品にはあってない気がする。個人的には井田ヒロトとかキボン。

でも全体的な完成度は高いし楽しめた。今後も注目しようと思う作家さん。
最後に、作中で輝いていたセリフを抜粋。「このままやったら俺らの人生、ずっと一ゾロや」を受けて。

「確かに一ゾロはファンブルだよ。<ソード・ワールド>では大失敗になるよ。でも<ガープス>のルールでは大成功だろ?俺たちの人生、いつだれが<ソード・ワールド>だって決めたよ!?」

ただの屁理屈に聞こえるかもしれないけど、どうしてこれはなかなか重くて熱いセリフですよ。

ひと夏の経験値 (富士見ドラゴンブック)

ひと夏の経験値 (富士見ドラゴンブック)