第九の日

中編集。最初の2作は遊び心に溢れたSFミステリ。表題作「第九の日」とそれに続く書き下ろし短篇は「視点」についての考察をぶつけた作品。全編通じて「ロボットの自意識」という問題を通じて「心とは何か?」というテーマを投げかける。
テーマそのものが非常に興味深いものなので、俺みたいに好きな人は、それだけで十分に楽しめてしまうと思う。小説の技術面では「ロナウジーニョジダンのプレイを見せつけられる」感じ。よくわからんけど兎に角すごいね、みたいな。まあこの辺は瀬名秀明を読みなれてる人にとっては、今さらって事かもしれませんが。俺初読なんで。
一読した印象では、とにかく難解だと感じました。ホークス。例えば最後の書き下ろし短篇、俺は未だ瀬名の表現したかった事がわかりません。帯に「恋愛科学小説」って書いてますが、それに違和感を感じるのも、瀬名の真意が理解出来てない事に起因すると思う。各作品は各々過去の作家・作品へのオマージュなので、元ネタ知らないってのが影響してるかもしれませんが。でも根本的にそういう問題じゃないな。
主役(?)のケンイチくんからは、どことなく「鉄腕アトム」っぽい印象も受けます。奇しくも浦沢直樹の「Pluto」とテーマが被る部分もありますので、そういう意味では今後の両作品の展開に興味が膨らみます。でも瀬名は続編書くのかな?

第九の日 The Tragedy of Joy

第九の日 The Tragedy of Joy