ディアスポラ

読み始めたのいつだっけか?最近小説を読む時間が割けなくなってるというのもあるけど、やっぱり読了まで随分時間がかかってます。だってハードなんだもん。ハードゲイなんだもん。SFフォ〜〜ッ!!
「ウルトラスーパー・ハードSF」の触れ込み通り、かなり難解な部分もある本書。これに関しては大森氏が後書きで「わかんねぇ所は読み飛ばせ」って言ってます。しかし実際読んでみると、例えば素粒子の話とか宇宙の次元がどうのって話は、実際の理論やイーガンの脳内理論を理解できるかどうかは別として、ニュートンなんかで解説されてる一般向け知識を基に「手前で勝手に想像する」ことは可能と思います。また“ポリス”(コンピューター上の仮想空間)の概念にしても、本書が書かれた97年時ならともかくとして、ネットやバーチャルリアリティといったものが身近な今なら比較的イメージし易いと思います。パッと見は難解だけど「勝手に想像してイメージを膨らませる」ことで十分楽しめると思いますた。
こういう小難しい部分を別にすれば、お話全体の構成はとってもシンプルでわかりやすい構造です。読んでて想像力がかき立てられて非常に楽しかった。そりゃそうだよね。ガンマ線だか何だかで地球が焼き払われて、「宇宙ヤバイ、マジヤバイ」と思った人々が、自分達のコピーを1000個だか作って、なぜか宇宙旅行を始めやがるんですよ?挙げ句の果てに何だ、次元の異なる宇宙への行き方が見つかって?5次元だか何だかよくわかんねぇ宇宙にボンボン繰り出して。しかもその動機ってのがスゲェ単純。何このバカ壮大さは?下手な薬物トリップより数倍面白いッスよ。いや、ドラッグをキメた事は無いからわかりませんけど。
ちなみに帯に書いてある「あらゆる文学形式の中でSFだけが与えうる深い感動。そのもっとも純粋なかたちがここにある」って煽り、個人的には嘘偽り無い表現だと思いました。「SFだけが与えうる」ってのは本当ですが、決して「SF者だけが享受出来る」では無いと思います。最近のドラマや映画が与える「感動」とは違うのも確か。
それにしてもこの作品、「宇宙の果て」を描くSFの一つとして、けっこう長く語り継がれるのではないでしょうか?「ベストSF2005」も1位確定か?いや、店で『万物理論』と一緒に積んで「ベストSF2005確定?」と煽ってるので、外れると微妙に困っちゃうのですが。まあ当たるかどうかは別として、多くの人に読んで欲しいと思う作品でした。仕掛け販売継続フォ〜〜!!

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)