レバノン


レバノン戦争の、最初の一日を描いた物語。カメラはある戦車の中から外には出ず、
物語は4人の戦車兵と、彼らがスコープ越しに見る外部の光景とで展開される。

という煽りに惹かれて観に行ってきました。



この映画、wikipediaではこんな説明が書かれています。

  • 4人の若いイスラエル軍兵士が置かれた極限状態を通して、戦争の恐怖を描いた


シアターNの紹介はこう。

  • 1982年6月6日 イスラエルレバノンに侵攻 鋼鉄の箱に護られた4人の戦車兵は 生々しい戦場の光景を目撃する それは精神の限界を超えた 狂気と殺戮の地獄絵図 しかし彼らは知らなかった 戦場に安全な場所など無いことを……


観た感想として、これらの紹介は間違ってはいないのですが、どうにもピンと来ません。自分なら、こう書きます。

(中略)4人の戦車兵は、生々しい戦場の光景を目撃する。
そこは狂気と殺戮の地獄絵図……しかし何より恐ろしいのは、自分たちが“何も知らない、理解できない”という事実。
自分たちは何故戦うのか? この作戦の目的は? そもそも誰と戦ってるんだ俺ら? マジでコレ生きて帰れんの?


戦争映画が面白いのって、不謹慎とかそういうの無視して言えば、「とびっきりの非日常」だから「どんな角度で切っても、刺激的な映像とか物語を作りやすくってウマー」が、大きいと思います。一人の人間の狂気を描くも良し、ひたすら臨場感溢れる要塞戦をドッカンドッカンやるも良し。


という訳で、戦争映画でリアルを追求した場合は「なんかマジっぽくてゴイスーだったりゴウキューだったりな作り物」が出来上がるのが常っていうか映画なんだから当然です。


ところが。本作がスゴイのは「マジで兵士目線の戦争描写」をやっちゃったところ。それを「リアル風に見せる」とか「映像的に臨場感溢れる感じにする」とかじゃなくて、見たまんまにする。だから絵的には、お話的には、ハッキリ言ってクソ面白くないです。だって、出てくる人がこういう感じだから→( ゚д゚)ポカーン


ではこれが何故スゴイのか。それは、「戦争を、現場の下級兵士レベルで見れば、恐怖とか人間性とか以前の部分で「イミフ」になる。イミフこそが戦場の本質」という事を伝える手段として、「兵士の( ゚д゚)ポカーンをそのまま描写することで、観客にも強制( ゚д゚)ポカーン体験をさせる」という冒険的手法を採用し、見事に嵌ったから。視点を原則戦車内に固定し、とにかく正直に兵士のダメな感じを描くことで、この試みが大成功を収めています。


楽しみが減るので詳しくは書きませんが、戦場に突っ込んだ後になって「つか敵って誰なの?」レベルの話になったり、RPG直撃にビビって(あんま深刻なダメージ入ってないのに)この世の終わりレベルで騒いだり、おやつのクルトンが戦車内に飛び散って凄くウザイ感じになったりと、色々残念すぎる兵士の描写で無駄にテンション上がります。隊長が気狂って作戦中に戦車の中で髭剃り始めるシーンと、壮絶な修羅場の後で捕虜の小便介護(なぜか見つめ合いながら小便する)シーンなんかフル勃起もんです。あと、ファランヘ党員のホモっぽい演技が超ステキ。



色々書いて僕の文章がサッパリ意味通ってないことにお気づきかと思います。それは、本作の「イミフ」ぶりを、感想レベルでも伝えようという心意義であって、つまり意図した文章破綻なのです。まじに。それを証明したいので、みなさんぜひ劇場に足を運んでみて下さいまし。



追記:要所要所で再生される Bajofondo の Montserrat みたいなタンゴ曲(?)が自分としてはとても好みなのですが、曲の詳細おわかりの方がいたら教えてくらさい。