とある飛空士への追憶

ネタバレあるよ〜。


「ヒコーキモノ」を描くアプローチってのは作家さんにとって色々な技法があると思うのだけど、読者として自分が好きなのは、やはり「臨場感溢れる空戦を描いているモノ」です。そして、そういう作品はかなり少なかったりする。
そもそも動きのある映像を読者に想起させるって事だけでも難しい話な訳で、読者の想像可能範囲スレスレで且つ、三次元機動を伴う視点となれば尚更の事。そんなにホイホイ作れるハズが無いですよね。
そして、この作品。

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

今までに読んだ小説の中でも、トップクラスに空戦描写が巧みだと感じました。ありがちで一直線なストーリーにも関わらず、手に汗を握って物語を追ってしまうのは、偏に先述の空戦描写を含む圧倒的な筆力の賜物。ギャーッ!坂井三郎機動がーッ!!
設定も良いですよね。性能的に劣る偵察機にお荷物載せて単機敵中突破。対空砲火の嵐と反則性能戦闘機の群れに追われても、反撃一つ出来やしない。ただひたすら機動を駆使して逃げるのみ。ベルカ8492飛行隊からサンダーボルトIIで逃げるより遥かに難易度が高い(エスコンネタ)。これは“萌え”と言うより“燃え”。コレ重要。
素晴らしい空戦を描きつつも、全体を瑞々しい綺麗な物語として構築したのもGJ。見事なバランス感覚。飛行服のお姫様テラモエス。白ビキニでフル勃(ry
ラピュタ」や「紅の豚」を想起させる作品ですが、安易な映像化はご勘弁願いたいです。薄っぺらくなる。気合入れて空戦やってくれるなら見たい。
同著者の『レヴィアタンの恋人』も読んでみようカシラ。この作者さんには今後もこういう綺麗なお話を期待したいです。