名もなき毒

流石だなぁ。巧いなぁ。仕掛けの埋め込みもキャラクターも展開のさせ方も、見事と言うほかは無い。ミステリとして、娯楽小説としての完成度を高めつつ、社会派な内容も適度に織り交ぜる手腕は凄い。新聞連載のクセみたいなのは仕方ない*1し、設定が多少ブッ飛んでてご都合主義なのもご愛嬌。所詮設定なんて大なり小なりご都合主義だよ。
「ああ宮部みゆきは凄いね面白いね。さて本屋大賞はどうしよう?」という問いになると、やはり二の足は踏んでしまいます。ここで推さなくたって宮部先生は広く読まれるじゃないですか。本屋大賞はもっと違う作家・作品を推すべきだってのが大方の意見だろうし、俺としてもそう思う。
けども。本屋大賞の趣旨の一つ「書店員自身が自分で読んで「お客様にも薦めたい」と思った」という部分を考えると、俺としてはそう簡単に切れる作品じゃ無いなと感じてます。娯楽小説についてその社会性を強調するのは違うかもしれませんが、この作品で語られる「人間だけが持ち得る毒」と、それを取り巻く人の「心」について、やはり多くの人に勧めたいと思う。
そんな訳で投票順は1位ではないけど、完全に切りもせずに保留です。他作品の動向によっては投票もあり得る感じ。こんな具合の投票が重なって、結果「押し上げられる様に」受賞となったら、またぞろ「本屋大賞の意義」みたいな問題になるのだろうなぁ・・・
#ところで最近「華麗なる一族」を見てる影響で、作中に登場する「今多コンツェルン」の脳内絵が万俵財閥です。会長は北大路欣也。年齢設定おかしい事になるけど。
##「クリスマスにサンタの扮装をして配達するデパート外商」を読んだとき、ふと学生時代の事を思い出しました。雑誌作ってた時に「無料サービス。けど雑誌のネタにはするよ」って事で一部近隣のご家庭からご愛顧頂いてました。大変だったけど、子供がすごく喜ぶから嬉しいんだよね。事前予約だから「サンタバッティング」は無かったが。

名もなき毒

名もなき毒

*1:ところで去年の候補作『告白』も新聞連載だったハズだけど、アレは読者がついて来られたのか??