ダメな議論
各種メディアのニュースで日々様々な社会問題に関して語られる議論、その中から「考慮に値しない糞議論」を選別するための機械的テクニックを教授するのが本書。多岐に渡る問題について、その全ての素養を身につけ検討する事は困難なのだから、本書で述べられる技術は有用であると思う。
具体的手法としては、議論を眺める際に「単純なデータ観察で否定されないか?」や「定義の誤解・失敗はないか?」等の5つのチェックポイントを課し、それらをどれくらいクリアするかによって、その議論を「妄想」とか「ぁゃιぃ」とか「考慮に値する」とか選別する事のようだ。もちろんチェックポイントのみで「正しい議論」(それがあるとすれば、だが)に辿り着く事は不可能だが、考えるポイントを限定していくのは賢い方法。本書には練習問題的なセクションもあり、解説がある。これをやってみるとわかるが、チェックポイントを検討する事で問題が頭の中で整理され、最低限自分で調べたり知識を仕入れる必要のある事柄が見えてくる。
よく考えると、これらの手法は学生時代に他人の卒論中間発表を聞いてツッコミを入れる為に何気なく行っていた事だし、2chなんかで議論に水を浴びせる為に行われてる事と大差無い(つまり特別難しい事ではなく、手法を身に付ければ誰でも出来る)。また対象とする議論に関しても、ニュース報道等に限らず、日常生活や仕事の上で耳にする様々な主張にも同様な分析が行える。確信犯的に言ってる事、無意識に言ってる事の双方を含めて。
直接に本書と関係無いのだけど、ウェブで各種調査の一次資料に当たるに際して、効率の良い検索方法や分析方法を纏めたテキストがあると便利だなと思いますね。本書でも「ググれば簡単に一次資料に当たる事が出来る」って書いてあって、それはチェックポイントの「簡単なデータ観察で・・・」って部分に関わるのだけど、実際例えば統計局のサイトに行って、必要な調査結果の必要な部分を探してって大変じゃないですか。別にそのテキストは書籍として発行される必要はなくて、ウェブページの体裁でも構わんのだけど。とにかく簡単に手の届く範囲に、平易な解説が欲しいなと。それが広く敷衍されれば「議論の底上げ」に極めて有用だと思うのだけど。って探せばあるのかな?
本書にPOPを付けるとなると、やっぱりこういう事になりそうだ。
,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,, ,,--―'''""`ヽ'  ̄`ヽ、 / ヾ / ~`ヽ / ヽ;: /"""ヾ ヽ / ;:;;:::'''' l /;:;;:::''' \ i / /;:;;:::''' ヽ ヽ | | ヽ | / ;/ ヽ ヽ / ;:;:ヽ ,,,,;;::'''''ヽ | i / ,,,,;;::::::::::::::: __ ヽ ヽ | | " __ :::: '"ゞ'-' | | | |. - '"-ゞ'-' ::::::.. |. | | ;:| ::::::: | :| | ヽ. ( ,-、 ,:‐、 | | | /ヾ.. | | | | __,-'ニニニヽ . | | .. | `、ヽ ヾニ二ン" / | | ヽ\ / | | l `ー-::、_ ,,..'|ヽ./ ヽ. :人 `ー――''''' / ヽ /;:;:;:;;:;:;: _/ `ー-、 ,.-'" \ー-、 ,.-'" \: \ .,.-''" | /. \ ~>、,.-''" | ,,..-‐'''"" ヾ ,.-''"| /――――、/ クソとミソを見分けられる人でないと (現代を生きるのは)難しい
あまりにもお粗末な議論なのに不思議と売れてる講談社現代新書の1827番とか、電波過ぎてネタ扱いされまくってるのに流行語大賞になってしまった新潮新書の141番じゃなくて、こういうのを売りたいなぁ。
#追記:中の人から便利なサイトを教えて頂きました。多謝。
- 作者: 飯田泰之
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 新書
- 購入: 23人 クリック: 1,054回
- この商品を含むブログ (177件) を見る