格差社会 何が問題なのか

昼飯読書でここ1週間ほど読んでた本。格差ってのは具体的にどういう指標で判断できるのか。日本はどういう具合に格差社会が進行してきたのか。諸外国との比較ではどういう分析が可能か。こんなのを統計データを用いて簡単に教えてくれました。私もそうなのですけど、やれ格差社会アメリカ型の競争社会だと、イメージ先行で語り、考えてしまう事が多々あると思います。新聞読んだりニュース見たりする時の基礎素養として良いテキストではないでしょうか。
本書の特徴は格差・貧困・税・失業等といった問題それぞれについて、先ず参考となるデータの読み解きがあり、続けてそれを土台とした論の展開を行っているという点にあると思います。どうもこの問題に関する書籍を見ると、基本的な現実認識はそこそこに「俺論」をぶつけてくるものが多い気が。自分で色々と調べて知識を持ってる人はそれで良いのかもしれませんが、私のように無知な読者には敷居が高すぎます。そういう意味で幅広い層にオススメしたい書籍です。
もちろん本書でも、論を展開してる部分では筆者の見識が現れます。しかしその部分には(おそらく筆者自身が意図的に注意して)「私の考えでは〜」という断りが必ずある。本書の最終章は丸ごと「筆者による提言」ですが、その部分でも同様。「こんな具合なんで俺はこう思うのだけど、お前らはどうよ?自分で考えてみ?」ってのが基本スタンス。どうしても感情的になり易いトピックですので、こういう書き方には好感を覚えます。
一つ難点を言うと、統計データを読み解く際に「ナントカ係数」ってのがたまに出てくる。ジニ係数とか。この係数に関して、どういう計算で求めるのか教えてくれない。もちろん係数がどういう意味を持つのかは教えてくれるのだけど、やっぱり気持ち悪いです。枚数の関係で説明を省かざるを得ないにせよ、せめて図表に式を添えて欲しかった。それだけで大分わかり易いし、スッキリするのに。
本文中で議論をかなり省略して結論に行ってる部分がありますが、後書きによると、これも枚数の問題からだそうです。詳しい議論を知りたい人は『日本の貧困研究』を読んでくれってさ。ってオイオイ東京大学出版会かよ。都会のデカイ本屋さんは知りませんけど、田舎では確実にお取り寄せです。ちなみにAmazonも「通常1~2週間以内に発送」です。本当に(ry
あ、ちなみに本書は岩波新書ですけど、割と売れ売れなんで田舎の本屋でもそこそこ在庫があると思います。あと日販の『格差社会フェア』(って書くとイヤなフェアだなw)に入ってる銘柄なんで、フェアをやる本屋さんは積むでしょう。まだセットは入荷してないけどね。

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

日本の貧困研究

日本の貧困研究