私感2〜越境するライトノベル

さて、続き。ラノベ作家「越境」の考察です。書店員なので「越境の販売戦略的価値」という観点で。
先ず一つに、私個人の経験から考える「元ラノベファンの再獲得」。昔は好きだったけど最近はさっぱり。こんな人は以外に多いんじゃないでしょうか?書店に行ってもラノベ棚には足を運ばない、そういう「元ファン」に対する戦略として、ラノベ作家や「ラノベ的小説」の、他レーベルや四六判文芸書への越境は有効な戦略だと感じます。
もう一つは「実はラノベにハマる要素がある一般層」の存在。話がファンタジーに偏ってアレですが、「指輪物語」や「ハリポタ」なんかが広く大衆へ受け入れられたのは、映像の影響や作品の完成度の高さはもちろんの事、あの手の物語や世界観を好む人が多かったからでは?という推測も可能です。
ここで考えに入れるべき要素として、最近の(主に若い層の)人達の「読書離れ」の傾向。読書が嫌いかと言えば、決してそうではない。DeepLove、売れました。なぜか?読み易いから。要するに「小難しいタルい文章は読みたく無ぇ」って事ですよね。『いま、会いにゆきます』や『世界の中心で愛をさけぶ』、これらも「読みやすい」お話。もちろん、これらの作品が文章の読み易さだけで売れたと言いたいのではありません。ただ、今のお客様を掴む大切な要素として「とっつきやすい文章」は重要だと思うのです。
さて、これら併せて考えると、アレ?ラノベもおすすめじゃないですか?こういう人に是非、読んでもらいましょ。ところがドッコイ、主に表紙が原因なのか、お客様はラノベコーナーに来てくれません。それなら仕方無い、ガワ変えて、不要な要素はオミットして、他の売場へ進出じゃい!
てな訳で、ここでも越境は意味のある戦略です。
結論としては、え〜と、要するにアレです、過去に「純文学」に対する「大衆小説」があったように、今の時代の新しい文体として「ラノベ小説」がメインストリームの一角へ乗る時期が来たんではないか?と思うのです。ラノベが一部のファンだけでなく、広い客層へ売れる時期が来るかも、と。
書店員の希望的観測妄想か、はたまた現実となるか。結果を知るにはもう少し、待たねばなりません。50年後の国語の教科書には『キノの旅』が載ってるかもしれませんよ?