DRAGON BUSTER 01

どれほど面白いかって言及は誰か任せ。検索すればいっぱい出てくるハズ。

龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)

龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉 (電撃文庫)

この作品、本文中には挿絵は一切ありません。誰の、どういう意図かは不明ですが、挿絵が不要な程に作者の描写能力が高いことは明らかです。しかし、それだけが挿絵の無い理由ではなかろうと思います。ある「仕掛け」の為に、意図的に排除したのではないでしょうか。
その仕掛けとは「オープニングタイトル」の存在。この効果はホントに凄い。作品世界にグイグイ引き込ませるド派手な描写を一通り済ませた後、突然の場面転換。一気に動から静へと転換を図り、物語がゆっくりと動き出す。そして、頁を捲ると見開きでタイトル。シーンを切り取った、決して奇抜ではない構図の絵ですが、この一枚で「物語の絵」がガチッと定まります。まるで映画を見ているような感覚です。
物語を脳内でビジュアル化する仕掛けとして、ライトノベルの挿絵は決して否定しません。しかし「どうしてこの場面を描くのか?」というような不満を多く感じる事も事実です。また、それは人それぞれで異なるでしょう。そういう意味で、本作の「タイトル画面で強烈な印象を与え、後は読者の感性に委ねる」という手法は素晴らしいと感じました。作者か編集者かは不明ですが、この仕掛けを考えた方には賞賛を贈りたいです。もちろん、素晴らしい絵を描いたイラストレーターにも。
このような試みの例に関して詳しくは知りませんが、決して主流の手法ではないでしょう。絵、或いは紙面レイアウト等、文章以外のアプローチによる作品表現はいくらでも可能性があると思いますが、まだまだ徹底的に実験・運用されていないと感じます。こういうのが色々と試されると面白いですね。