Ghost in the BookStore

「深夜に売場で作業をしていると、何かの気配を感じる」と主張する女性が当店には多数います。たぶん、多くの書店でこういうハナシはあるのではないでしょうか?書店に限らず店舗・倉庫・ビル等といった「適当な広さのある閉鎖空間」で深夜に単独作業を行う場合、そういう精神的な不安はつきまとうものでしょう。
しかし。本当にそれだけでしょうか?考えてみましょう。まず前提として、霊的なモノは「存在する」と仮定してみます。では、書店に出没する「霊」とは、何者なのか?
書店員の方は、ちょっと想像してみて下さい。明日、突然、アナタは出社途中の横断歩道で三菱ジープ2台に挟まれてしまいます。ワイヤー巻き取り用ウィンチでイチコロです。晴れて霊的な存在へとシフトしたアナタは、どうしますか?
もちろん、人によって様々だと思います。奥さんの様子を見に行く人もいるだろうし、銭湯の女湯へ直行する人もいるでしょう。でも幽霊になって1週間もすれば(霊的存在の時間概念は、現実社会と同期してる事にします)、自分の店が気になるのではないでしょうか?自分が抜けたお陰で、棚が荒れているかもしれない。平台がグチャグチャかもしれない。後任者がダメダメかもしれない・・・。仕事が好き、あるいは本が好きな書店員の方なら、間違いなく店へ行くと思います。「ここの並べ方は違う!この商品が薄い!これは返品期限が近いっ!!」さあ幽霊さん大忙しだ。
さらに想像してみましょう。霊的存在の社会が現実と同じ構造なら別として、特にやらなきゃならん事も無く、コミュニティの形成もされていなければ・・・たぶん、幽霊って暇です。暇を潰すためにどうするか?元書店員であるなしに関わらず、本好きな人の多くは書店へ行くのでは?なにせそこにいれば、毎日新しい本が読めるのですから。
さてさて。こう考えると、書店は幽霊達にとって「溜り場」と化してるかもしれません。ともすると、店のスタッフと同じ数くらいは、幽霊書店員・幽霊お客さまがいるのかも。そんな密度なら、売場で仕事をしていて気配を感じるのも不思議ではないですね。たまにですが、乱れていたハズの棚が知らぬうちに奇麗になってる事があります。「もの好きなお客さまの仕業だろう」などと思いがちですが・・・もしかして。
注意が必要です。周りにいるのは「元書店員」と「本好き」ですよ?そんな場所で、誰も見てないからと手を抜いた仕事をしたり、本を少しでも粗雑に扱ったら・・・どうなるでしょうね?少なくとも私が幽霊なら、ただでは済ましません。制裁と教育が必要ですからねぇ・・・



という話を臆病な女性店員に吹き込もうかと思いましたが、機未だ熟せず。怪談は夏の夜と相場が決まっております。八月のお盆シーズン、人不足で嫌でも残業をしなければならん時を狙い打とう。