英国王のスピーチ

観た日
たぶん2011/3/13
観た場所
シネマ・ロサ


今更感想を書こうと思い立ったのは、今朝のニュースで「ロイヤルウェディングを待つ民衆の前に普段着で降臨するウィリアム王子」という絵を目にしたから。

以下ネタバレあり。


吃音症に苦しみ「演説」という公務をこなせない王が、友の助けを借りて努力を重ね自分の弱さを克服し王として成長する……ざっくり言ってしまえばそういうお話。


この作品で重要なのは、物語前後で変わる「王」と「国民」の関係性。

物語の冒頭、大英帝国博覧会閉会式。父王ジョージ5世の代理として演説台に立つヨーク公アルバート王子。

側近は彼を不安の眼差しで見つめ、民衆の顔にも期待と好奇とが入り混じる。そして吃音。退場する王子。落胆。


そんな彼に父王ジョージ5世は言う。

“現代の君主の役目は「道化」だ。国民から愛され・信頼される役者になれ。演説は練習すればできる。私のを見て真似をしろ”
第一次大戦後に君主制国家が次々と没落する中、議会・国民と良好な関係を築き国家を支えてきたジョージ5世らしい、王の在り方。


父親の期待。周囲の期待。国民への責務。そして家族の愛。

自らの勤めを全うすべく、アルバート王子は「道化」を演ずるため吃音治療を決意する。

しかし王室に出入りする医者では一向に症状が改善しない。そんな時に彼が出会ったのが、平民の言語聴覚士・ローグ。

彼との出会いで治療の糸口こそ掴めども、やはり完治への道のりは遠い。時に反目し合いながらも治療を重ねる内に、いつしか二人の関係は「王族と医者」から「友人」へと変化していく。


父親の死、兄の退位、王位の継承……様々な試練が彼に降り注ぐなか、彼はローグを信頼し治療を続けた。

そして始まる第二次世界大戦ナチスドイツの脅威。彼は大英帝国全国民へ向けたラジオ演説を行う。

彼の前には放送用マイク、そしてその向こうにローグ。彼は、目の前の友へ向けて語りだす。

ラジオの向こうにいる全ての英国民へ、一人の友人として。


そして国民は、かつて雛壇の上で吃りながら演じた大根役者としてではなく、一人の信頼できる友人として王を受け入れ、共に大戦を戦い抜く決意を決める。


どうだろう。歴史的正確性はさておき、この物語でジョージ6世は英国王室最大の偉業を成し遂げたのだと思う。

役者として舞台の上にいる王から、国民の隣人としての王へ。真の象徴たるべく、最も信頼できる友人としての王へ。


ジョージ6世を初めとする英王室が連綿と築き上げてきた、英国民との確固たる信頼関係。

その努力の表れが、昨日普段着で現れたウィリアム王子であり、その結果の表れが、あの熱狂的なウェディングなのではないだろうか。

そう思った。


追記:

本作、「本当はヘタレだけど気丈に振る舞う言語聴覚士」×「ヘタレで癇癪持ちだけど、芯の強い王子様」って構図とか、「やたらスキンシップとりながらの治療(顔とかスゲー近い)」とか、色々と腐女子をターゲットにしすぎて英国始まったな感凄かった。

同人シーンけっこう盛り上がる予感。